真昼間にもかかわらず、そのお店は輝きを放っているように見えた。
4月上旬の南相馬市原町区。その頃原町区は原発事故によって屋内退避区域に指定され、区内の人口は激減していた。市民は放射能の見えない恐怖と不安に怯え、多くのスーパー、コンビニは閉まり、その他の店もほとんど休業していた。
そんな状況の中、町外れに悠然と開店している店があった。店の名は『食事処いずみ』。店主の大戸直正さんは、奥さんと共に店を切り盛りしている。私は正直、この地域を覆っていた不穏な雰囲気に疲れ、ましてや定食屋さんでゆっくりご飯をありつけることなど諦めていたので、この店が「街角の光」に見えた。
お店は地震による被害が少なく翌日から開店したが、原発事故後に仕入れが困難になり、大戸さんは不本意ながらも山形へ避難した。しかし、町の活気を取り戻すためには、外からの声援だけでなく地元から発信する必要性を痛感したという。そうして南相馬へ戻り3月の最終週に営業を再開した。
いまだ食材の調達が困難な状況ではあるが、職人気質の大戸さんは以前と変わらず、お客さんに美味しいもの提供し、また来店してもらえるようにと、調理に励んでいる。
大戸さんにとって誇りであるこのお店は、私にとってそうであったように、地元の人々にとって「街角の光」となっているだろう。
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