2011/06/23

二人のヒミツ

そのお姿を見て、僕は眼を見はった。
短いスカートを着こなし、高いブーツを履き、頭にはおリボン。昔風に言えばハイカラ、今風に言えばファンキー。その身なりで喫茶店でカフェオレを啜るオバチャンの姿を拝見したら、声を掛けずにいられなかった。

そのオバチャンは川村京子さん、南相馬市原町区出身。高校を卒業してしばらくは原町に残っていたが、24歳の時に上京。パチンコ屋を始めとして様々な職業を点々とし、40歳頃に再び原町に戻ってきた。以後は原町でアルバイトをし、今は年金暮らし。独身なので親が残した家に、今は一人で暮らしている。

喫茶店でしばらくお話を伺った後、オバチャンの誇りが姉弟と言うことで、昔生活を共にした家で撮影しようということになり、オバチャンのお宅に場を移すことに。お宅は原町駅から徒歩5分くらいの所と立地は良い。地震の影響もほとんどないそうだ。ただ室内は雑然としている。これは地震による影響ではなく、モノが単純に多いから。しかもその多くが人形・置物だ。絵、小物に始まり、ぬいぐるみ、日本・西洋人形、はたまたちびくろサンボ顔負けの黒人の置物まで多種多様だ。なんでもそれらの収集グセがあると言う。その大半はリサイクルショップで購入したと何故か誇らしげに語ってくれた。独身の寂しさを紛らわせるためモノで囲っていると読んだ僕は、オバチャンに理由を尋ねるが「好きだから」とニベもない。「頼りになるから」と4人の姉弟を誇りに挙げて近況を自慢気に語るオバチャンの姿を見ていたので僕の推察に確信をいだいていたが、オバチャンの答えは変わらず。答えは重要ではないと気付いた僕は、それ以上の問をやめた。

その後撮影に移り終盤に差し掛かった頃、僕があるお願いをした。オバチャンのとあるお姿を撮影したい、と。だがオバチャンは何度お願いしても頑なに僕のオファーを断った、名誉に関わると。それ程でもなかろうにと思ったが、それまでの撮影に十分手応えを感じていた僕は諦めた。
東京から遠い原町のオバチャンと僕の間に2人だけの秘密があるというのも、オツなものだと思う。


0 件のコメント:

コメントを投稿