2011/05/11

サナギから蝶へ

子供でも逆境を糧にして成長するんだなと、まるで我が子のように感心した。

南相馬市の原町第一小学校は避難所となっており、震災から1ヶ月近く過ぎた4月上旬になっても市内外から100人以上の避難者が身を寄せ合って暮らしていた。この頃になると避難者たちは、家に戻れないことや家族を失った現実と向き合いつつ途方に暮れていた。加えてこの小学校は屋内退避指示圏内であっため、 避難所となっていた体育館の窓は終日閉め切られており、重苦しい雰囲気が漂っていた。

しかしこの体育館の空気を一人、颯爽と切り裂く者がいた。ななちゃん、4才だ。ななちゃんは体育館の中を歩き回っては誰彼構わず喋り、生活空間を仕切る段ボールの「壁」をものともせず遊んでもらっていた。ななちゃんが「遊んでもらっていた」と言うより、避難者が 「遊んでもらっていた」と言う方が正しいかもしれない。実際、ななちゃんと接して避難者は「元気をもらった」、「ななちゃんがいて良かった」 等々と言っている。私もななちゃんに「おにいちゃん」として遊んでもらって、一日の疲れを癒してもらった身である。

避難所の多くの人から愛されていたななちゃん。しかし母の柴口明美さんによると、被災以前は内気な子で人見知りも激しかったそうである。それが震災後、原発20キロ圏内の南相馬市小高区に住んでいた柴口さん一家は避難を余儀なくされた。ななちゃんはそうやって避難所を点々とする間に、自分なりに考えて行動するようになっていたのではないか。母親の明美さんはななちゃんの変化をそう捉えている。そんな、サナギから蝶に脱皮したかのように成長した娘さん、ななちゃんが、明美さんの誇りである。

私は「おにいちゃん」として、ななちゃんの今後の更なる成長を楽しみにしている。が、先日電話でななちゃんと喋った時に、「おにいちゃんだよ~」と声をかけたら、「どのおにいちゃん?」と返されてしまった。
さすが、人気者。

0 件のコメント:

コメントを投稿